底の敗れた船
---地下銀行と蛇頭は表裏一体をなすものだ。
蛇頭はヒトを運び、地下銀行はカネを送る。ヒトとカネのツーウエイ。こうした闇の中国人ネットワークがいつしか日本社会に存在し、法の目をかいくぐってヒトとカネが自由に行き来している。
日本では「正しいことは声を小さくしていえ」ということわざがあるのを知った。正しいからと声高に相手を責めるのは、武士道に反するらしい。
調べてみましたが、そのような「ことわざ」はみつかりません。
でも、とても気持ちはわかります。
武士の情けにふさわしい「ことわざ」だと思います。
「中国人にとってカネとメンツは、命より重い」とよく言われる。趙は、借金がまだ残っている身で強制送還される日が来るのは怖い、と呟いた。農村戸籍の者は、その格差から逃れるために、一獲千金を夢見て日本に命がけでやってくる。不法入国、不法滞在、不法就労の中国人は、「底の敗れた船」の同乗者たちだ。自分たちで漕ぎ、水を掻き出し続けなければ、カネを生む舟もろとも海に沈むことを知っているからである。