リスクは常に双方向性
本を読んでいると、
今まで自分の中に在る常識がひっくり返されて、
目が開かれる思いをすることがあります。
それが読書の醍醐味ともいえますが、
そんな本の一冊です。
理論ではなく現実を見据えた場合、牛レバ刺しを原因とした腸管出血性大腸菌による感染症は微々たる健康被害しか起こしていません。肝臓に大腸菌がいた、という基礎医学的、微生物学的データもすでに議論したように瑕疵があります。しかし、それ以上に問題なのは「そこに微生物がいる」というのと「病気が起きる」ことを混同してしまっている、会議の専門家や厚労省官僚たちの誤謬です。
食品は大切な栄養源であると同時に一種の「毒」でもあります。例えば生野菜は貴重なミネラルやビタミンを提供してくれますが、寄生虫や細菌感染症のリスクがついて回ります。火を通したり、農薬を使えばそのリスクは減らすことができますが、今度は栄養素の低下や農薬そのものの害という別のリスクが生じます。ここでも、一方のリスクばかり見て他方のリスクを無視するのは思考停止です。
無農薬の生野菜というと何となく「良い食べ物」というイメージがあります。実際に無農薬野菜は多くの人に健康で快適な生活をもたらしてくれますが、一部の人にとっては健康のリスクです。無農薬野菜は回虫などの寄生虫感染症のリスクをはらんでします。無農薬だから絶対に安全、というのはイメージや雰囲気がもたらす間違った判断です。