別荘は買わない

つもりです・・・が先のことは誰にもわかりません。

何が「わからない」かはいろいろある

「 わからない」からスタートしているので

よくわかります。

 

現代アート、超入門! (集英社新書 484F)

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ピカソは、キュビスム(立体派)の画家として知られている。キュビスムとは、グッと簡単に言ってしまえば描く対象をいろんな角度から見て、あらゆる見え方を細かい四角(キューブ)の断片にして一つの絵に描き込み、現実とは異なる新しい世界を構築し「存在の真実」を提示しようとしたものだ。
例えばここに一つの円錐があるとしよう。これを上から見れば丸である。ところが横からだと、三角形に見えるはずだ。だが、そのどちらも円錐の姿であり、どちらかが間違っているというわけではない。いわば丸も三角も「円錐の真実」である。ピカソたちはその両方共を描き表そうとした。そのためモチーフ(題材)は様々な方向から観察され、それぞれの見え方が小さなキューブに切り分けられ、画面上で再構成された。そうやってできたのが、あの細かな四角だらけの、ちょっとわけのわからないキュビスムの絵画である。したがって、キュビスム絵画とは多くの視点=多視点によって書かれた絵ということになる。

 

現在、セザンヌは「近代絵画の父」と呼ばれているが、こうした事情を振り返ると納得できるのではないだろうか。セザンヌから、マティスは現実にとらわれない目を学び、ピカソは事物の構造や関係を探求する目を学んだ。そして、フォービスムからは人間の感情や感覚といった内面を追及する方向性が、キュビスムからは存在の本質や法則を知性的に追及する方向性が生まれ、以後現代アートの大きな二つの流れとなって発展していくことになる。

 

現代アートに馴染めないという人が、その理由を問われてよく答えるのが、「わからない」からだろうと思う。「わからない」と一口に言っても何が「わからない」かはいろいろあるもので、これまですでに、カンディンスキーのところで「何が描いてあるのかわからない」、キルヒナーで「上手かどうかわからない」、デュシャンで「そもそもアートかどうかわからない」、モンドリアンで「値打ちがわからない」、そしてマグリットでは「わかったのかわかっていないのか、わからない」といった、様々な「わからない」を探ってきた。

 

 

アート鑑賞、超入門!  7つの視点 (集英社新書)

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