別荘は買わない

つもりです・・・が先のことは誰にもわかりません。

人間は炎を見て安心する

 

いい家は「細部」で決まる (新潮新書)

いい家は「細部」で決まる (新潮新書)

 

 

「敷居をまたぐ」という言葉に見られるように、敷居には特別な意味がある。敷居は結界なのである。敷居をまたぐとは、結界を出入りすること、つまり一つの世界から別の世界に移動することを意味する。「二度とこの家の敷居はまたがせないからな!」は、単に物理的に家に入ることを拒むだけでなく、その世界からの追放、つまり絶縁・絶交を示す。敷居はまたぐものであって、踏んではいけない。日本の伝統的な家屋における立ち居振る舞いの基本だが、新社会人が接待の席などでやってしまいがちな失敗の一つでもある。和室に入るときは、敷居の手前で正坐し、手をついて礼をする。

 

一坪は畳2枚分、6尺平方(1尺は約30.3cm)=約3.3㎡である。住宅の価格は「坪××万円」と表示されることが多いし、洋室でも「××畳」という。最近は和室の無い住宅も多いが、私たちの空間感覚には畳のサイズがしっかり染みついている。

 

もっとも、現代の住宅建築で大黒柱は必ずしも不可欠のものではない。建築物の構造はごくおおざっぱに言って、柱と梁で支える架構式と、壁で支える壁式とがある。日本の伝統的な軸組構造は前者、ヨーロッパを中心に諸外国では石や煉瓦、コンクリートブロックなどで作った後者の組積構造が発達した。北米から輸入されたツーバイフォー工法は木造で、枠組壁工法とも呼ばれ、柱でなく壁によって全体が支えられている。大黒柱はいらない。
架構式も壁式もそれぞれ長所があり、どちらが優れているともいえない。たとえば地震があった場合、伝統的木造軸組構造では柱が揺れることによって地震のエネルギーを逃す柔構造。対してツーバイフォー工法は変形しないように構造用合板で「面」として固めた床や壁が建物を守る剛構造が力を発揮する。

 

暖炉は炎が見えるところがいい。焚火でもキャンプファイヤアーでも、人間は炎を見て安心する。暖炉の焚き口のまわりをマントルピースと言い、大理石などで装飾することがある。上部の炉棚(マントルシェルフ)には書物や美術品などを飾る。住宅の中のアート空間である。

 

ネジの原理をひとことでいうと「急がば回れ」である。1回転してねじ山ひとつぶん進む。最短距離を進むよりは手間だが、力は小さくて済む。急斜面をジグザグに登るのと同じだ。

 

ゴムは地震にも強い力を発揮する。免震ゴムである。地盤と建物の間にゴムが入ることで、揺れを緩和して建物に伝える。揺れを受け止める際、そのエネルギーを熱エネルギーなどに変えてしまうのだ。振動を抑えるということでは洗濯機やオーディオの下に敷くのと同様だ。鉄道や地下鉄、大型車両が通る幹線道路近くのマンションなどでは、基礎の下にゴムを入れて電車や自動車の振動を防ぐ。あらゆるところにゴムがある。

今まさに話題になっている免震ゴムです。

 

鉄とコンクリートが出会うことで建築は大きく進歩した。
セメントと水、そして砂や砂利を混ぜて作るコンクリートは、圧縮する力にはとても強い。ところが引っ張る力にはもろいという弱点を持っている。それを補うのが鉄筋である。コンクリートの中に鉄筋を埋め込んだ鉄筋コンクリートは、圧縮する力に対してはコンクリートが、引っ張る力に対しては鉄筋が力を発揮する。また、鉄は酸化しやすく、高温で強度が低下するが、強アルカリ性のコンクリートで覆われることで酸化が防止され、火事にも強くなる。鉄とコンクリートはお互いの欠点を補い合う絶妙なコンビである。
しかも鉄とコンクリートは熱に対する膨張・収縮度合いが同じ。熱いときは同じように膨張し、寒いときは同じように縮む。もしこれが違っていたら、たちまち鉄筋とコンクリートはズレて、あたかも肉離れのような状態になってしまうのだ。

夫婦のような関係ですね。

 

漆喰は建築材料としてじつにすぐれている。まず不燃性能が優れている。古くから土蔵の壁に漆喰が使われてきたのはそのためだ。調湿機能もある。空気が湿っているときは水分を吸収し、空気が乾くと放出する。また、カビも生えにくい。吸音性能も現代人にとってはありがたい。湿気だけでなく、臭いや有害物質も吸収してくれる。そして造形が自由自在だ。四角い壁でも三角でも丸でもコテひとつで塗れてしまう。その特徴を生かして、単に真っ平らに塗るだけでなく、レリーフ状に仕上げることもできる。