別荘は買わない

つもりです・・・が先のことは誰にもわかりません。

MBAが役立つ業種、企業は限られる

「経営のプロ」といわれる人が、

高額の報酬で、短期的な利益をはじき出すケースがあります。

日本マクドナルドやベネッセを渡り歩いたあの人も、

「プロ経営者」と言われましたが、

結局、持続的な利益を生み出す仕組みを作ることは

できませんでした。

 

何が問題だったのでしょうか?

一つの答えがこの本にあります。

前回はコチラ

結局、私達消費者は、設計情報を買っている - 別荘は買わない

 

 

グローバル化に失敗している「日本の電機・通信・IT業界の負け組企業」と、「歴史的に官庁需要に応えてきただきの負け組企業」に決定的に欠けているのは、世界中の情報を体系的に収集するビジネスプロセス(=情報の流れ)である。

 

つまり、研究開発の目的は、将来利益になる「仕掛情報資産」を生み出すことである。研究開発の成果と経済的な利益(あるいは、工学と経済学、テクノロジーと経済的付加価値)はここでつながっている。簡単に言えば、技術が、顧客が価値を感じる新しい製品内容を作り出すことに貢献するか、ビジネスプロセスの品質を高め、原価を引き下げる「ノウハウ創造」(方法)に貢献するかということである。後者の場合、わかりやすい例は、業務ソフトウェアを導入することや製造工程の機械化である。

 

労働力1(X)が、商品開発・製品開発を担う組織である。ここのアウトプットは設計情報である。そして生産準備後、完成した設計情報は世界中の工場に渡される。製品開発の中心となるタレントはXにいる。そして実は、Xの中の大体2%くらいのタレント人材が、組織の富を生み出す中心的な役割を果たしている。

 

知的な背景が要求される環境の中で行われる非定型的な労働が、創造的知識労働である。今、先進国でもっておも需要度が高いのがこのタイプの労働である。日本や米国のような先進国で利益を生み出しているのは、本質的にはこの創造的知識労働者だからである。本書のテーマであるタレントも創造的知識労働者と言うことになる。例えば新しい機能・性能・機構・構造を考えるエンジニアの仕事は創造的知識労働である。また、効果的なアルゴリズムを発明する数学者も非定型的なハタラキをしている。

 

 

同じ労働をしていると言っても、単なる転写型労働を全員が続けているだけでは、企業は立ちゆかない。知的な背景が求められようが求められまいが、情報転写型労働を行うだけでは、富は生まれてこない。「わかっていること」「先輩達が作り蓄積してきた知識」を学び漫然と転写しているだけでは、本質的には利益を生むことにすらなっていない。つまり高額な、日本人の給与水準に見合うハタラキを生み出したことになっていないのである。つまり日本人であれば、誰もが、何らかの割合で、創造的労働、非定型労働に取り組まなければならない時代になっている。グローバル化した経済では、否応なくこうした現実を受け入れなければいけなくなった。

 

 

実際、企業経営の専門家が実際の企業経営に成功している例はわずかしかない。その場合も学校で学んだ経営学の知識で成功している人はまずいない。実は経営学やMBAが役立つ業種や企業は、最初から限られているからである。

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「経営のプロ」は経営者のサポートスタッフとしては良い。しかし組織のリーダー的な役割を任せるのは危険である。そもそも彼らに経営を任せるのは能力的に無理である。

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結局、旧式の米国式経営や、学校で教えている経営学が有効なのは、「古典的な資産」とか「権利」のようなシンプルな財を扱う単純なビジネスの場合だけである。反対に、複雑な情報資産を知識によって作り出すタイプのビジネスは、最初から対象にしていない。そもそも複雑な製品開発や技術開発を伴う創造的産業や知識集約型産業は、かつてはまったく存在していなかったのだから、仕方がないのである。

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米国式経営を採用して失敗した代表例が、ソニーである。◇◇私も、彼ら経営者に責任はあると思う。しかし、根本的な問題は出井社長が採用した米国式経営である。お門違いの米国紙経営を採用した出井氏本人が悪と言うわけではない。もっと言えば、そんな出井氏をCEOに任命した人に責任がある。

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経営学の教科書に基づけば、出井氏はじめ、ソニー経営陣が行ってきた「改革」は何も間違っていない。事業部制の導入や、ダイナミックな資産の組み換えや、積極的な人員削減や、組立工場の閉鎖といった施策は、至極当然なものばかりである。米国だけではなく、世界的に見ても常識的な施策だと言える。ソニーの経営陣は、絵に描いたような「経営専門職」の仕事を真面目にこなしてきたのだ。アウトソースにしても、正しい意味で行っていたならば、間違いではない。株主に見せる財務諸表だって、表面的には良く見える。ところが、ソニーは、教科書的にはすべて「正しかった」はずの施策を真面目に実施した結果、消費者が、発売前に行列をつくってまで買いたくなるような、魅力的な商品を生み出すことはできなくなった。

 

  

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