別荘は買わない

つもりです・・・が先のことは誰にもわかりません。

結局、私達消費者は、設計情報を買っている

「薬の原価率は1%以下」とのことです。

薬九層倍どころではありませんね。

 

再読です。

前回はコチラ

社長や事業部長は寝ていたのだろうか? - 別荘は買わない

  

 

最近日本では、工学部だけではなく経済学部でも、ものつくり論の研究が盛んになった。工学で言うプロダクト・モデルのことを、経営学の分野では、ざっくり「設計情報」と呼んでいる。経営学によると、「ものつくり」とは「設計情報を媒体に転写して実体をつくる」というイメージだという。例えば、設計情報をガラスと言う素材(媒体)に転写してシャンパングラスと言う実体を作る。実はこれはプロダクト・モデルの考え方をイメージ的にわかりやすく言い直したものである。現在は、「プロダクト・モデル」ではなく「設計情報」と言う言葉のほうが、一般的にビジネスマンの間で使われている。

 

 

では、設計情報と言う言葉を使ってトヨタ生産方式を表現してみよう。トヨタ生産方式は、「売れるモノを、売れるときに、売れる順番につくる」ことである。この場合「売れるモノ」に相当するのが「設計情報」なので、「売れる製品の設計情報が、売れるときに、売れる順番に工場で製品(実体)に変換される」ことが、トヨタ生産方式である。ちなみに売れないモノは生産されないので、情報のまま留まる。グローバル化・デジタル化し、情報化した現在は、設計情報が世界中の工場で「売れるときに売れる順番で実際の商品に変換されて」お客さんに届けられている。つまり、お客さんが買っている肝心の価値は、工場で生産する以前の、設計情報なのである。

 

 

つまり、現代の「製造業」は、その言葉のイメージと全く異なるものになっている。製造業は、ざっくり言ってしまえば「コンテンツ産業化」「情報産業化」「知識産業化」しているのである。もちろん、利益の大半を生み出すのはこうした情報創造の工程(製品開発)であって、情報転写の工程(生産現場)ではない。これはトヨタに限った話ではない。現在では、世界中の製造業の常識である。

 

結局、私達はモノ(実体)を買っているように見えて、実際は設計情報を買っているのである。

 

結局、私達消費者は、設計情報を買っているのである。ただ単に材料や資源があるだけでは商品にならない。設計情報のような知識集約的な財が、経済的に価値があることは分かると思う。例えば薬の原価率は1%以下と言われている。つまり2,000円の風邪薬の原価は20円程度である。またルイ・ヴィトンのバッグの材料費も売値の1%程度である。つまり40万円のバッグの材料費は4,000円程度と言うことだ。ルイ・ヴィトンはアップル同様、企画、設計は本社のデザイナーが行い、量産は韓国などの工場に委託している。これらのビジネスでも売価と原価の差額は設計情報の値段である。設計情報の値段とは、研究開発の成果やデザイナーのデザイン、集積回路の設計といった、知的な成果や才能のアウトプットの生み出す経済的な付加価値である。現在、こうした知識の塊、才能の塊である設計情報を創造することこそが、先進国企業の仕事であり、利益の源泉である。

 

 

つまり設計情報・ノウハウと、それを理解出来る頭脳を持つ人材の三つが揃えば、いつでも現物の商品を作り出すことができる。労働を通して私たちが生み出したり、売ったり、買ったりしているモノとは、本質的にはこうした情報そのものなのである。このように、最近のものつくりやサービス業の実態をより正確に把握するには、モノ(実体)の視点で見るよりも「情報視点」もしくは「知識視点」で見たほうが本質的であるし、付加価値創造活動の実際を正確に理解できる。私達の「労働」に関しても同様である。有形の「ものつくり」でも、無形の「サービス」でも、営利事業でも、非営利組織でも、人間が価値を生み出す活動は、この三つの情報資産を中心として説明できる。いずれも、元をたどれば人間の「ハタラキ」を引き出したものが、組織の成果だからである。情報視点・知識視点で見たときには、有形の「モノ」つくりも、無形の「サービス」も全く同じだということでもある。情報視点で組織や人のハタラキを捉えれば、モノとサービス、営利・非営利を区別して考えなくてもよいのである。