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別荘は買わない

つもりです・・・が先のことは誰にもわかりません。

数を数えながら登るのが一番いい

64歳で初登頂以来、毎日登って800回を超える著者。

さて、今頃は何回になっているでしょうか?

 

まいにち富士山(新潮新書)

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たぶん、たとえこれから私が富士山に1000回登ったとしても、わが家では「あ、そう。ふーん。それがどうしたの?」で終わるのではないかと思っている。しかし雨さえ降らなければ毎朝4時~5時の間に自宅を出る私のザックに、手作りで栄養満点、出来立てのパウンドケーキを入れてくれるのは妻である。このことも含めて、多くの人たちの有形無形の支えがあったからこそ、富士登山を続けてこられたし、これからも続けて行けるのだと思っている。とてもとても、自分の力だけで富士山の頂上に立ったなどとは言えないのである。

 

シーズンオフの山入りは、どんなに山に慣れている人でも緊張を強いられるものだ。天候の激変を含むさまざまな危険に遭遇する頻度が格段に多いからである。この重みを承知しながら敢えて言うと、私の富士登山期間は五合目登山口へ至る車道が開通する昭和の日(4月29日)前後から11月中旬ごろまでのおおよそ約半年間である。◇◇私が最も選ぶことの多い「富士宮ルート」を基本にして私の毎日の様子をお話ししたい。各種ガイドブックに記載されている登頂時間は5時間から5時間30分だが、私は平均2時間40分程度で山頂に到達することを先にお話しした。これまでの最短記録は2時間7分だが、この速さで登ると翌日に差し障りが出てくる。つまり、毎日登り続ける私としては、翌日の登山に疲れが倍加するようなペースでは失敗なのである。気持ちの上で、自分の体力の8割程度の消費かなと感じられるぐらいがちょうどよい。毎日登る体力と気力を維持するためには、2時間40分前後で登頂するのが私の最も適した登頂スタイルである。

 

最後はまじめに、最も効果的な方法を書こう。数を数えながら登るのが一番いい。声に出さずに1,2,3と10まで数える。10を数える地点まではなんとしてでも登ってやるとの意気込みである。そして数え終わったら最初からまた1,2,3と数えていくのである。きっと効果があるから試してみてほしい。上手くいくようなら大事に使っていただきたい。

 

http://mainichi.jp/articles/20150821/ddl/k22/040/058000c

富士山

5合目対談 富士宮口「最後の強力」岩見功さん/登山歴1300回超、佐々木茂良さん /静岡

毎日新聞2015年8月21日 地方版富士山にかけた人生

 富士山・富士宮口で最後の「強力(ごうりき)」と呼ばれた富士宮市の岩見功さん(88)と、富士登山が1300回を超えた神奈川県秦野市の佐々木茂良さん(75)が、富士宮口5合目で対談した。富士登山の魅力や心得を語り合い、岩見さんは「お客が登頂した喜び」、佐々木さんは「富士山へのあこがれ」を話した。【高橋秀郎】

お客の登頂が一番だね 岩見功さん/あこがれや充実感から 佐々木茂良さん

 佐々木さん 当時の強力の仕事は?

 岩見さん 毎年、富士山本宮浅間大社のお田植え祭の7月7日に事務所を開き、8月のお盆過ぎまで10〜十数回登った。九州などの団体が多く、人数に応じ複数付いた。富士宮口の2合目から1泊で登り、「砂走り」から御殿場口に下るコースが大半。5合目までバスが通ってやめた。体力も続かなくなった。

 佐々木さん 思い出深いことは?

 岩見さん 大阪の高校生の団体で、遅れがちの生徒が1人いた。心配していたら盲腸炎だった。翌朝、担任の先生と一緒に下ろした。無事に手術が済んだと手紙が来て、ほっとした。お年寄りをおぶったり、ひどい雨になって登頂を断念したこともある。天気の急変は最も怖かった。仕事だから登ったが、年間100回以上も登るのは感心するね。

 佐々木さん 充実感や満足感でしょうか。富士山のようにどっしりとありたい、自分が強くなれるんじゃないかとあこがれや思いがある。根気が出てきたかな……。88歳までは登りたい。強力の楽しみは何でしたか?

 岩見さん お客が元気で登ってくれることが一番だったね。9合〜9合5勺(しゃく)になれば、ばててくる。お客の荷物は精いっぱい、背負子(しょいこ)に積んだ。30、40、50キロも。全員がけがも病気もなく頂上に着き、神社にお参りしたら、やれやれって感じ。ここまで来れば十分なので、剣ケ峰(3776メートル)は希望者だけを連れて行った。お客に喜んでもらい、無事に帰すのが強力冥利に尽きる。

 佐々木さん 心がけたことは?

 岩見さん 同じペースでゆっくり登らせた。下は楽だからと急げても、上は気圧が低くて疲れる。5合目から登れるようになってもっと大事になった。慣れた強力ほどゆっくり歩かせた。団体は力の強い人も弱い人もいる。先頭が楽だ。達者な人は後尾に回して面倒をみてもらい、弱った人は前に。山で離れ始めたら追いつくのは至難。団体は、間隔を空けないことが大切だ。

 佐々木さん 理にかなっていますね。5合目から速過ぎる人が多い。自分を抑えれば持続できるのに途中で失速する。「ウサギとカメ」の通り、ゆっくりの方が早く登れる。団体の話も、多くの人数を少ない人数で動かす、強力の哲学ですね。
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 ■人物略歴
いわみ・いさお
 1926年生まれ。25〜45歳ごろ客案内の強力。富士宮口の組合で最後の組合長。一時約150人が所属し、70年の富士山スカイライン開通を機に解散。本業は臼職人だった。
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 ■人物略歴
ささき・しげよし
 1940年生まれ。教員を退職後の64歳で富士山に初登頂し、登山回数は20日現在1315回。秦野市選管委員長。著書に「まいにち富士山」(新潮新書)。講演活動も。