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別荘は買わない

つもりです・・・が先のことは誰にもわかりません。

社長や事業部長は寝ていたのだろうか?

再読です。

前回はコチラ

⇒ 同じ年月を過ごしても - 別荘は買わない

 

衝撃的な著者の意見が相次ぎますが、納得することばかり。

今まで不思議だったことが名探偵に解明されて

腑に落ちたような気分です。

 

 

財務会計に出てくる「人間」は、人材のハタラキの質や種類にかかわらず、どれも同じ人件費という「費用」の勘定科目のみである。管理会計に登場する「人材」も、工場で働く人の人件費かオフィスで働く人の人件費としてしか把握されない。あるいは、正社員は固定費で、派遣は変動費くらいのものである。いずれもそのハタラキに関わらず、財務諸表で人間は「費用」でしかない。「弊社は人材こそ最大の資産だと考えています。つまり人財です」などと言っておきながら、リストラするときには費用の高い順、つまり給料の高い順に機械的に解雇していく。その都度、都合のよい様に人材は扱われてきたわけである。ある時は資産、ある時は単なる費用として扱われてきたということである。

 

現代的な意味で、人間が生み出すことを求められている付加価値とは何で、またそれを生み出す「労働」とは何で、それらと企業の利益の関係はどうなっているのかを理解する必要がある。ほとんどの日本企業と日本人が間違えていたのは、「考え方」である。技術や人材や資金などの問題ではない。多くの日本企業と日本人が失敗したのは、人材とそのハタラキに対する「考え方」が時代から取り残されていたからである。また、世間的な社会的通念のほうも実態に合わせて変わる必要がある。

 

日本では製造業と言うと、工場から価値が生まれていると思っている人が今でも多い。実際に1990年代前半頃までは、工場での製造品質が日本企業の競争力の源泉になっていた時代もある。それをメディアは「メイド・イン・ジャパン」と呼んでいた。文字通り日本の工場で作った高い製造品質の製品は世界市場を席巻した。ところが現在は事情が異なる。現在ではトヨタ生産方式を導入し、日本の工場で高品質の製品を製造するだけでは、他国の製品と差別化できるほどの高い価値を生み出していることにならない。そうした手法は、現在では、世界中で当たり前のように取り入れられているからである。

 

例えば、NTTグループは、通信・IT分野を対象とした研究開発に年間4000億円程度費やしてきた。過去15年間で累計してみただけでも、研究開発投資額は、少なくとも4兆円を超えている計算になる。ところが、これまでの成果はどうだろうか。4兆円を使い切ったものの、競争力のある商品やサービスが生まれた実績が無い。大金はどこに消えてしまったのだろうか?NTTの研究所は新規性を追求しているという。その割には市場には新規性のある製品もサービス見あたらない。ビジネス的に成果と呼べるものが無い。また学術的にも大きな成果が無い。多くの学者から引用される論文もないし、IBMの研究所と違いNTTの研究所からはノーベル賞受賞者もまだ出ていない。最近は投資金額の割に成果が出ないので各方面から存在意義が問われているという話も聞こえてくる。◇◇NTT持株会社傘下の事業会社は気の毒である。NTTの場合、毎年数千億円の研究開発費は各事業会社が拠出している。ところが成果はどうだろう?例えばNTTドコモはアップルにお願いして、競合二社に遅ればせながらiPhoneの販売を開始している始末である。◇◇ではNTTはいったいこれまで何のために巨額の研究開発投資をしてきたのだろうか?NTTは有線通信事業では事実上国内市場を独占している。そのため経営的には今のところ困らないのだろう。しかしNTT社内で仕事をしている「優秀だったはず」の人材が世界市場で受け入れられるような「新製品・新サービス」を生み出すことが全くできなかった。NTT一企業としての利益はともかく、こうした事実は国家的には大損失である。歴代の社長と管理者たちの責任は大変大きい。◇◇さらに困ったことは、この問題がNTTグループだけで完結しなかったことである。これまでいわばNTTのグループ企業だったといってよい、NECや富士通沖電気といった旧電電グループの企業は同様に存在感を失ってしまった。業績も一貫して低下している。一言で言えば電電グループはグローバル化した市場に対応することができなかった。そもそもNTTグループと旧電電グループはグローバル化するということがどういうことなのかわかっていたのかどうか怪しい。NECや沖電気財務省表を見る限り、すでに倒産しているという人もいるほどである。NECや沖電気は政治的につぶせない理由があるから存続しているという人までいる。

 

 

 「商品価値を考えるのは技術者や研究者の役割ではない」と言いたいようである。全く呆れたもので、会社や部署が無くなってしまえば「人類の進歩」などないのではないか。エンジニアと研究者も工場関係者同様、目的と手段が逆になっている。そもそも技術開発や研究開発は利益を生み出すための手段ではなかったのか?このように大量の社員がリストラされた負け組企業では不可思議な価値観がはびこっているのである。高学歴で高度な知識を持った人材が開発した「論文や特許になる技術」が投入された末にできた「売れない製品」を、生産技術のプロフェッショナルが最高品質でトヨタ生産方式で生産し、在庫管理しているのである。その結果、当然売上げも利益も上がらない。そこで、昼休みに消灯したりして全社一丸となって「懸命にコスト削減」に取り組んでいる。本当に不思議な世界である。社長や事業部長は寝ていたのだろうか?