別荘は買わない

つもりです・・・が先のことは誰にもわかりません。

同じ年月を過ごしても

再読です。

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知識に関する価値観の違いは、決定的に重要 - 別荘は買わない

 

説明は単純化していますが、濃い内容です。 

畑村さんと考え方がよく似ています。

 

 

50年前の世界とは、一見何も変わっていないようで、私たちの生み出している付加価値とそれを生み出すハタラキの関係は、完全に別物になっている。そうしたいわば「地殻変動」の理由を探ってみたのが本書である。そしてそれは、ものつくりやサービスにおける本質的な価値である「設計情報」、またそれを作り出す「タレント(有能な人材)」とそのハタラキといったことを説明することですっきりと理解できるものなのである。

 

企業活動を情報視点で見るとは、ものつくりでもサービスでも、企業の活動を「設計情報の創造と転写」という視点で見ることである。つまり、「企業が付加価値を生み出す」=「設計情報の創造と転写」ということである。その際、設計情報・ノウハウのような「情報資産」を創造するプロセスを担うのが、人間の労働である。「情報資産」は人間の労働の成果物である。

 

 

 

能力構築競争-日本の自動車産業はなぜ強いのか 中公新書

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量産工場では、完成した設計情報から媒体へ転写が行われる。これが「生産」である。藤本教授によれば、ものつくり(サービスも含む)とは、「設計情報が媒体である物質(人間、原材料、ハードウェア、紙媒体、素材といったもの)に転写(transfer)されることをいう。そして製品にせよ、サービスにせよ、「商品とは、有形・無形の素材という媒体(メディア)に、価値を担った製品設計情報が乗ったものである」。

  

グローバル化と日本のものづくり (放送大学教材)

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とはいえ、有形の財が重要だった時代から変わっていない財務会計では、設計情報はもちろん、設計情報の仕掛品も企業内に蓄積される資産性のあるノウハウ情報も、経営成績や経営状態を示す財務諸表には記載されない。そうした情報資産を生み出す資産性の高い人間の頭脳はもちろん、記載されない。管理会計でももちろん、事情は同じである。ここがビジネス上さまざまな問題を引き起こしているのだが、詳しくは後で述べよう。

 

つまり、研究開発の目的は、将来利益になる「仕掛情報資産」を生み出すことである。研究開発の成果と経済的な利益(あるいは、工学と経済学、テクノロジーと経済的付加価値)はここでつながっている。
簡単に言えば、技術が、顧客が価値を感じる新しい製品(内容)をつくり出すことに貢献するか、ビジネスプロセスの品質を高め、原価を引き下げる「ノウハウ創造」(方法)に貢献するかということである。後者の場合、わかりやすい例は、業務ソフトウェアを導入することや製造工程の機械化である。

 

一般企業では、知的バックグラウンドがあることになっていても、転写型知識労働しかできない人材は、すでにコスト削減やリストラの対象になってきている。それは第一部で説明したように、先進国の知識労働者が生み出すことを期待されている価値が、「知的な情報資産」になっているからである。わかっていることを繰り返し間違いなく転写する労働をしている人達は、労働者として大きな経済的付加価値を生み出しているわけではない。むしろそのような労働を削減するために頭を使うことが、先進国の労働者の仕事である。

 

同じ労働をしているといっても、単なる転写型労働を全員が続けているだけでは、企業は立ちゆかない。知的な背景が求められようが求められまいが、情報転写型労働を行うだけでは、富は生まれてこない。「わかっていること」「先輩達が作り蓄積してきた知識」を学び、漫然と転写しているだけでは、本質的には利益を生むことにすらなっていない。つまり高額な、日本人の給与水準に見合うハタラキを生み出したことになっていないのである。つまり、日本人であれば、誰もが、何らかの割合で、創造的労働、非定型労働に取り組まねばならない時代になっている。グローバル化した経済では否応(いやおう)なくこうした現実を受け入れなければいけなくなった。

 

 

Aは頭脳の中に蓄積されていく情報であるため、目で見ることはできない。各人の頭脳に形成されていく無形資産である。◇◇この意味では、一口にベテランと言っても意味が人によって異なる。例えば会社に同期で入社してから、創造的知識労働や非定型労働といった問題解決・課題達成業務を20年続けてきたベテランBさんと、同じ定型業務を20年続けてきたベテランCさんとでは、20年後に完成している頭の中身はまるで違う。同じ年月を過ごしても、BさんとCさんでは、頭の中に蓄積したAの質は異なる。ここでは、Bさんは「タレント」、Cさんは「ワーカー」といったイメージである。一方では無形資産を生みだす、あるいは利益を生み出す「人的資源(資産)」で、他方は、定型的な労働を繰り返している「費用」である。

 

優秀なタレントと一般的なプロフェッショナル・スペシャリストとの最大の違いは、知識に関するアイデンティティである。単なるスペシャリストは、知識を活用する「目的」よりも「知識そのもの」にアイデンティティを持っている人が多い。プロフェッショナルも同様である。一方優れたタレントは、知識にせよ職業にせよ「目的」を達成するための「手段」だと考えているところに、際立った特徴がある、そのため、タレントは目的的に知識を獲得し、獲得した知識を手段として使う。

 

 

洞察力が高い人とは、既知の範囲を拡張していく能力が強い人である。つまり洞察力とは、地頭力を別の切り口で表現しているだけである。知的な活動では、既知の事柄を元に、未知の領域や、ぼんやりしている領域を推定しているケースが多い。論理的にも直観的にも推定する。創造的労働・非定型労働をするには、こうした地頭力に基づく、知識獲得能力、アナリシス・シンセシス能力、洞察力と、それらを元にチームを使って仕事をするための論理的思考能力、コミュニケーション能力が必要だということである。優れたタレントは、目的的にこうした頭の活動を日常的に行っている。