別荘は買わない

つもりです・・・が先のことは誰にもわかりません。

傲慢な日本 脳天気な日本

考え方を変えて、からくりを変えて、教育を変える。

思い込みや幻想で思考停止してはいけない。

 

 

技術大国幻想の終わり これが日本の生きる道 (講談社現代新書)

 

 

その頃から私は、「世界の中で日本の産業はこれからどういった方向へと進んで行けば良いのか」といったことを強く意識するようになりました。そのためには、やはり実際に現場を知ることが大切です。そこで私は、2000年代後半から、アジアや南米などの新興国の企業や生産現場への訪問を続けるようになりました。
これは私が以前から提唱している「三現」の実践です。三現とは「現地」に行って、「現物(現場にある物)」に直接触れて、「現人(現場にいる人)」の話に真摯に耳を傾け議論することです。

 

実際に海外を回ってみて感じるのは、世界規模で労働賃金の平準化が進んでいることです。例えば中国を見ると、以前は日本よりずっと安い賃金で人を雇えるという大きなメリットがあったので、多くの日本企業が進出しました。しかし最近では、給与水準が上がって日本とあまり変わらない状況になっています。◇◇このように生産や現場管理の仕事の価値が世界規模で年収200万円程度のラインで標準化されている一方で、経営ができる人の給与が下がることはありません。これは今までなかったものをゼロから作るクリエイティブな仕事をする人も同じです。こうした人たちは海外でも高く評価されているので、3,000万円から安くても600万円程度を稼ぐことができるようです。

 

近年の日本の製品は、機能がどんどん増えて、その結果、高い価格設定がなされているのが一つの特徴になっています。しかし、そういうものはほとんど相手にされないと考えたほうがいいでしょう。
かつて日本の消費者も同じ道をたどってきましたが、初めて製品を使う人には、基本的な機能があれば十分です。自動車は走ればいいし、洗濯機は洗って絞ることができればいいのです。便利な機能が必要になるのは、製品にある程度慣れてからで、最初は便利さよりも手ごろな価格で入手できることのほうが喜ばれます。そうした製品はすでに部品から完成品までをすべて新興国で作れるようになったので、日本から輸出する必要はありません。つまり工業製品も今は地域で生産して地域で消費する「地産地消」が世界の趨勢になっているわけです。そこで必要となってくるのは、機能を充実させることよりも、その国の文化を知り、その国の文化に合った製品を作ることでその国の消費者の圧倒的な支持を集めることなのです。