別荘は買わない

つもりです・・・が先のことは誰にもわかりません。

電力の鬼

電力の鬼・松永安左ェ門は、

軍部と革新官僚が手を結び、電力の国家統制が進んだ戦前、

官吏は人間のクズである」と言い放った。

 

電力と国家 (集英社新書)

電力と国家 (集英社新書)

 

 

電力と国家 (集英社新書)

 

 

日本が戦争への道をひた走ったといわれる昭和の初めから10年代というのは、三月事件、十月事件、血盟団事件五・一五事件、神兵隊事件、そして二・二六事件とクーデター、テロの頻発するまさに動乱期であった。その一方で、当時の国内は政財界の腐敗が進み連日のごとく汚職事件が新聞を賑わせていた。おりしも昭和4年(1929年)ニューヨークのウォール街で起こった株の大暴落の波及で、日本でも昭和恐慌が幕を開けた。あちこちで中小企業が倒れ、失業者が巷に溢れ、農家の娘の身売りが相次ぐ。打ちひしがれる日本経済の中で、財閥だけに富が集中する不公平さに人々の支配階級への不満が募っていた。労働運動が盛んになりプロレタリア作家たちが財閥を中心とする拝金主義者を糾弾し、搾取され迫害される人々の物語を次々と世に送り出した。
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本来ならラディカルな左翼作家と国家統制を推し進める軍部とは敵対の関係にあるはず。軍部が左翼を褒め称えるなどおかし話しだ。なぜこのようなことが起きたのか。両社とも財界の腐敗、汚さを糾弾する点で、互いの利害関係が一致したからである。こうした「ねじれ」現象が、この時代の空気をさらに不穏なものにさせていった。昭和7年2月に前蔵相・井上準之助が、3月には三井財閥団琢磨が暗殺され、五・一五事件二・二六事件などが次々と起こるが、当時の国民の多くは、汚職にまみれ、私利私欲ばかりを追求する政界、財界を憎しと思うあまり、命を張って現状打開の行動を起こした右翼青年や革新将校たちに気持ちの上では喝采を送っていた。飛ぶ鳥を落とす勢いでのし上がってきた電力王・松永安左ェ門が民衆の敵とみなされたのも、こんな時代背景があったからである。

 

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