別荘は買わない

つもりです・・・が先のことは誰にもわかりません。

やりたい放題の格差社会

著者はシャーロック・ホームズの研究家でもあります。

そちらの話のほうがおもしろかったです。

 

 

私の敬愛する名探偵シャーロック・ホームズが大活躍したのは今から100年あまり前の19世紀末、まさに日の沈むことのない大英帝国の絶頂期で、舞台は首都ロンドンが中心だった。◇◇富は世界中からロンドンに運ばれ、集積されたので、金融・貿易の中心地シティを舞台に活躍した貿易商人、銀行家、保険引受人、土地持ちの資産家、そしてもちろん、利権を操る政治家、高級役人たちも大いに潤い、資本蓄積は進んだ。しかし、その恩恵にあずかったのは、数の上ではごく少数の人たちであり、市民の大多数は、相変わらず貧困の生活から抜け出せないワーキングプアの状態を強いられていた。◇◇上層階級は富と冒険にうつつを抜かし、下層階級は閉塞感の中で犯罪とゴシップと飲酒に強い関心を持つ、といった二重構造、現在風に言えば格差社会が成立していた。◇◇富の流入に引き付けられて地方からの人口流入も激しく、ますます大都会化する中で、貧困、退廃、悪習、犯罪が蔓延し、ホームズの盟友ワトソンによれば、ロンドンはまさに「下水溜」のような様相を呈していた。ビクトリア女王(在位1837~1901年)の支配していた時代の後半は、特に「光強ければ影もまた濃し」の時期だったといわれる。◇◇ヴィクトリア朝後期を暗喩とすることの当否は別として、現在の日本にもよく似た現象が多いのは興味を引くところだ。世界に冠たる経済大国化、東京への一極集中、格差社会の顕在化、治安状況の悪化、それに関連するのかどうか、常識では考えられない猟奇事件の多発。そういえが、当時のロンドン市民を恐怖のどん底に落とした、あの「切り裂きジャック事件」はまさに大英帝国の絶頂期の1888年に発生し、結局は未解決のままで終わってしまった。


明治維新の廃藩置県が行われた明治4年は1871年です。