別荘は買わない

つもりです・・・が先のことは誰にもわかりません。

アベノミクスの限界

デフレの原因、アベノミクスの限界、日本の借金1000兆円の行方。

日本が抱える経済の問題について目から鱗のわかりやすい解説本。

 

金融緩和の罠 (集英社新書)

金融緩和の罠 (集英社新書)

 

 

萱野稔人(かやのとしひと)

<金融緩和>
日本銀行が民間の銀行から国債などの資産を買い取ることで、銀行に直接お金を供給することである。ほかにも金融緩和には金利を下げるというやり方もあるが、今問題となっているのは前者のほうの方法だ。

 

 

藻谷浩介(もたにこうすけ)

 

金融緩和によってお金の量がふえたからといって、かならずしも人々は設備投資や消費を活性化させるとは限らない。

 

<デフレ>
物価が下がれば、お金の価値が相対的に上がっていく。
(同じ金額のお金で買えるモノが増えるので)

 

なにより最大の問題は、金融緩和の始まった90年代後半以降の日本の景気低迷は貨幣供給量の不足が引き起こしているわけではないということです。足りないのはモノの需要です。今の日本では貨幣を増やしてもモノの需要をふやすことにはなりません。

 

<生産年齢人口>
バリバリと働く現役世代の人口。15歳から64歳までの人たち。生産と消費という経済活動の中心にいる年齢層。こうした人口の切り取り方が経済を見る時に重要。

 

 生産年齢の総数で言えば、1995年には8716万人だったのが、2010年には8103万人まで減っています。15年間で7%も減少しています。◇◇ところが足元の2010~2015年には史上最高の400万人以上の生産年齢人口減少が新たに見込まれているのです。◇◇しかも怖ろしいことに、劇的な生産年齢人口減少が始まるのはむしろこれからです。この先は1年に1%ずつ生産年齢人口が減少していくペースになる。◇◇日本経済が背負っている大きな負荷はもう一つあります。それは、現役世代が減ると同時に高齢者が急速に増えるということですね。日本人の世代別人口で最も多いのは、1940年~1950年生まれの人たちです。なかでも多いのは1947年~1949年生まれの団塊世代です。その大きな人口の塊が2012年から65歳をこえつつあり、現役世代から退いていっている。

 

<人口オーナス>
現役世代が増加することを「人口ボーナス」と呼びます。逆に現役世代が減少し高齢者世代が増加することを「人口オーナス」と呼びます。この人口オーナスこそ小売販売額減少の引き金だったのです。

 

たとえ話で話を単純化するとこういうことです。仮に自動車しか生産していない国があるとしましょう。その国では車を運転する世代の人口が激減し、高齢者が激増している。当然車は売れ残り、値崩れをおこし、皆さんが言う「デフレ」が起きた。そんな国で金融緩和をすると、自動車の売れ行きが回復し、価格が元に戻るでしょうか。運転する人の頭数が減っているのだから、やっぱり販売台数は減っていくでしょう。

 

河野龍太郎(こうのりゅうたろう)

 

実はエコノミストや政策当局者が本当の問題に気が付きにくくなる現象があります。それは、人口ボーナスがピークに達した時に不動産バブルが起きるという現象です。

生産年齢人口の割合が増加から減少に転じたのは

▽日本のピーク  1990年代初頭→ その後バブル崩壊

▽アメリカのピーク 2005年前後→ 2007年にサブプライムローン 2008年にリーマン・ショック

アイルランドのピーク 2005年前後→ 2007年まで不動産バブル バブル崩壊してソブリン問題

▽スペインのピーク 2005年前後→ 2007年まで不動産バブル バブル崩壊してソブリン問題

 

▽問題の中国のピーク 2015年前後

 2015年、そのあとに来るものは・・・・・

 

ゼロ金利政策量的緩和があれば、財政支出によって公的債務が膨張しても国債金利は上がらない。だから政治家は安易な財政出動を重ねる。その結果、国の借金をとめどなく膨らんでゆく。そういうかたちで間接的に金融政策がコストを生じさせている。

 

物価上昇の熱をさますためには、つまり、日銀は政策金利を引き上げなければならない。◇◇しかし、そのことは長期金利の急激な上昇、つまり、国債価格の急落をもたらす恐れがあります。大量に国債を保有している民間銀行にしてみれば、国債の価格が下落するということは、損失が発生し、自己資本が目減りしてしまうということです。それは、金融機関の経営を揺るがし、日本の金融システムの動揺をもたらしてしまう。だから、日銀は国債をさらに購入し、国債の価格を高く買い支えざるを得ない。

 

小野善康(おのよしやす)

 

小泉政権以降に限らず、バブル崩壊以降、日銀は貨幣の供給量をどんどん増やし続けていたんです。ここで重要なのは、貨幣の供給量を増やせば物価は上昇するのか、つまりデフレ克服につながるのか、という問題です。◇◇金融緩和をしても物価の上昇をもたらすことはできない。デフレ脱却などできないということですね。◇◇GDPの額も1992年~1993年以降ほとんど動きがないですね。つまり金融緩和をこれだけ続けていても結局、名目GDPは拡大していない。

 

モノを売る側にとっては、同業他社の商品ではなくお金がライバルなのです。このお金の魅力に人々がとりつかれて、モノに比べたお金の価値がどんどん上がっていく。これがデフレなんです。お金の価値とは一定額でどれだけモノが買えるかということです。それはつまり、お金の価値が上がるということです。言い換えれば、デフレとはお金の価値が上昇しつづけるバブルなのです。80年代の日本のバブル景気では、株価や土地の価格が上がり続けました。今はお金の価値が上がり続けるという新型バブルが起きているのです。人びとはモノを買わずにお金にしがみつき、たとえモノの値段が下がっても、お金が惜しいのでモノを買おうとしない。そのせいで物価が下がり続けるので、現金を長く持っていればいるほど現金の価値が上がっていく。そのため、ますますお金を持っていたくなる。こうした思考のスパイラルがモノの売れ残りと失業をうんで、所得、つまり人々へのお金の流入を止めているのです。

 

モノはありすぎるとお腹がいっぱいになったり邪魔になったりするが、お金はいくらあっても困らない。それどころか、気持ちに余裕が出てくる。そういう状況でお金の供給量を増やしても、人々はそのお金を貯め込むだけです。◇◇それなのに、新古典派ケインジアンも発展途上社会の発想で、貨幣の実質量が増えれば人は喜んでお店にとんでいくと思っている。そういう社会なら金融緩和も効果があります。バブル期以前の日本ではそうでした。だからこそ、貨幣供給量に比例して物価もGDPも上がっていったのです。しかし、繰り返しますが、貨幣を保有していたいという願望が強くなった現代日本のような成熟社会、特に将来への不安が強い時代には、人は消費に向かわない。将来の不測の事態に備えようと、貨幣への欲望がとても強くなっている。

 

民間のビジネスにはのらない雇用を創出するための財源の問題◇◇私はその税源は増税によって調達しても構わないと考えています。なぜなら税金はお金を右から左に流すだけで、国民のお金の総量自体は変わらないからです。税金を取られると損したような気がしますが、その分財政支出がおこなわれますので、国民の誰かの手には渡っているのです。 

 

  

デフレの正体  経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)

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