別荘は買わない

つもりです・・・が先のことは誰にもわかりません。

子供だましと侮るなかれ

単なる名作の感想・解説ではなく、書かれた時代背景を掘り下げて、一歩二歩踏み込んだ解釈をしていることに感心しました。見方が変わるという意味でおススメです。 

謎解き 少年少女世界の名作 (新潮新書)

謎解き 少年少女世界の名作 (新潮新書)

 

 

「最後の授業」で、少年がフランス語を上手にしゃべれないのは、実はアメル先生が言うように「いつも勉強を翌日に伸ばすのがアルザスの大きな不幸」というような、単純な理由によるものではない。もう、お気付きだろう。アメル先生が毛嫌いする「アルザスの方言」とは少年たち地元民の旧来の母国語であるドイツ語だったのである。

 

さらにこの年、(ジャック・)ロンドンはアメリカ社会党党大会で、日系移民への差別が話題になると、「バカを言うな、社会主義者である前に、おれは白人だ」と机を叩いて怒鳴り、反対意見を封殺した。
苦労した人間は、他人の痛みがわかるというのはどうやら嘘であるらしい。白人という「自分の巣」しか見えなくなった成功者ロンドンは、有色人種である日本人を、昆虫扱いしてはばからない。

 

ハリー・ポッター」シリーズはまだ未完なので断定はできないが、22世紀に「少年少女世界の名作全集」を編纂する際には、必ずノミネートされるだろう。この作品は実によくできている。出来過ぎているといってもいい。それが玉にきずと言えなくもない。