別荘は買わない

つもりです・・・が先のことは誰にもわかりません。

風の音、愛のうた< Loving You, Loving Me >

見て良かったと思いました。

きっと心に残ると思います。

ぜひ見ていただきたい映画です。

    

三組三様の愛を描くドラマ。英題から想像すると三組の男女の恋愛を扱っているように思えてしまうが、愛は愛でも家族愛の方だ。タイ映画お得意のオムニバスかと思ったら、交わることのない三組のストーリーが同時進行する形となっている。
 一つ目のストーリーは、音楽学校の男子学生がちょっと変わった教授の旅に自閉症の妹を連れて行き、やがて妹の心に・・・というもの。この妹役が、アピンヤー・サクンチャルーンスックだ。なかなかの好演ですばらしい。この演技で、スパンナホン賞の助演女優賞にノミネートされている。この人、かわいらしい顔立ちで今タイでは人気があるのだが、残念ながら出演作品は日本ではまったく公開もDVD化もされていない(2011年現在)。教授役である、本来はコメディアンのソムチャイ・サックディクンがいい味を出している。
 二つ目は、靴屋を営んできた父と祖父の仲が悪く、その間で苦しむ娘と祖父、そして父と祖父の間の家族愛を描いている。長いひげを生やした祖父役のウドム・ソーンセーンが、温かい感じが出ていて適役だ。
 三つ目は、テロが頻発する南部地方へ夫の仕事の関係で移ってくる家族。しかし、母と息子との間に・・・というもの。
 作品を見終わった後は心がほのぼのとする感じに仕上がっているが、冒頭から終盤近くまではかなりシビアなムードとなっているはその人の好みにもよるかもしれないがややつらい。また、三つのストーリーが入っているため、ひとつひとつの話にドラマチックさが欠けているように感じてしまうのはいたしかたないところか。
 出演者のパッチャイ・パックディースースック(パップ)はPotato(ポテト)というバンドの一員(ボーカル)で、この作品の主題歌も歌っている。また、映画は初出演。監督のピーラサック・サックシリとサヨムプー・ムックディープロームは、本作がデビュー作。サヨムプー・ムックディープローム監督は、カンヌ映画祭パルムドール(最高賞)に輝いたことのあるアピチャーポン・ウィーラセータクン監督作品の「真昼の不思議な物体(Mysterious Object at Noon)」<2000年>に俳優として出演している。
 原題は「(お互いに)愛し合ってありがとう」とでも訳すのであろうか。2011年、第12回NHKアジア・フィルム・フェスティバルで上映。


風の音 愛の歌 ขอบคุณที่รักกัน

 

風の音 愛の歌 ขอบคุณที่รักกัน